未来を見据えたプロレス(前編)

ローリングストーンジャパンに面白い、というか興味深い記事がアップされていました。

rollingstonejapan.com

棚橋に対してのインタビューで、メインテーマはやはりケニーとのイデオロギー闘争の件。これに関しては以前記事にしましたが

 

surreal-tokyo.hatenablog.com

 

今回は棚橋とケニーが目指すこと、またはそのベクトルの違いについて思うところを書いていきたいと思います。

 

 

①−ケニーが目指すプロレス

ケニーがここ数年の新日本プロレス日本プロレス界で成し遂げたことは間違いなく「日本プロレスの海外輸出」

 

 

 

日本のプロレス業界では最大規模まで成長した新日本プロレスにとっても次に目指すは世界といったところ。これは新日本のフロント陣のインタビューからもわかるが、もっとリングの上でわかる部分で言えば、バレットクラブの創設からも読み取れる。

 

 

 

 

プリンスデヴィット(現フィンベイラー)、AJスタイルズをリーダーに置いて世界的な注目を集めた。その後、彼らがWWEに引き抜かれたことからもどれだけバレットクラブが業界で危険視されていたのかがよくわかる。

WWEに移籍した後の彼らは一躍、メインロースターへと駆け上がった。そのスピードたるや目にあまるものがあったが、それこそ、彼らがWWEでのギミックチェンジやプッシュを必要としないくらいの知名度とスター性があったことの証明であった。

 

 

 

 

さて、少し話がずれてしまった。そんなバレットクラブの実質的三代目リーダーとなったケニーに世界からの期待値が高まるのは必然であった。プロレスファンというのは非常なもので、いくら会社からプッシュされたレスラーがいようとも、そのスター性やカリスマ性が欠如していようものなら大ブーイングをする。(以前の内藤や、現在進行形の後藤などがその例に挙げられる)

 

 

 

 

 

しかし、期待値が高まったケニーにブーイングはほとんどなかった。これは彼の経歴が大きかったと私は思っている。かつてのDDTでの活躍でアイドル性があったこと、全日本プロレス参戦時に見せた圧倒的な強さがあったこと、これらによって会場内のファンからはブーイングというよりも迎合される形となった。

 

 

 

 

日本のファンを大きく味方につけることとなったバレットクラブに、ケニーは自らのプロレス観を融合させようとした。例えば、インターコンチのラダーマッチIWGPの3wayである。これをWWEの真似事と見る捉え方もできるが、私は彼がDDTでやってきたことを世界に売りつけているように見えた。

 

 

 

 

このケニーのプロレス観はしっかりと世界へ発信できた。結果として、新日本プロレスワールドの会員数は伸びたし、何よりも東京の会場に来る外国人ファンの数が多くなったように感じる。

 

 

 

 

激しい、大技のぶつけ合いは確かに危険である。だが随所に大技、一昔前ではフィニッシュホールドになっている技が組み込まれていることは見ている方からもきらびやかで見ごたえがあるものだ。クラシカルなレスリングからは程遠い彼のスタイルであるが、ある意味で「わかりやすさ」がある。

 

 

棚橋が重々「ケニーのプロレスはわかりにくい」と言っているが、プロレスを初めて見るような人たちにとってはクラシカルよりも圧倒的にわかりやすい。海外の、特にWWEやTNAを見ているファンからしてもケニーのスタイルはウケるに違いないのである。

 

 

 

 

 

では、ケニーのプロレスがWWEやTNAのファンからウケる理由は何なのか。ただ、それらと同じようなプロレスを見せられても彼らはケニーにハマらないはずである。ここがケニーの目指すプロレスのミソであると私は考えている。

 

 

 

見栄えのする大技にプラスしてストロングスタイルな打撃の数々。彼は自分の経験だけではなく、新日本では柴田や石井が見せるようなストロングスタイルも融合させたのである。

 

 

これによって、海外ファンからしてみれば既視感はあるが目新しいコンテンツになる。矛盾のような物言いだがそのギャップを違和感なく表現したケニーの功績は評価されるべきであるのは間違いない。

日本のファンにとっても既視感のあるストロングスタイルに目新しいアメリカンスタイルが融合された新しいコンテンツに映る。

 

 

 

 

 

ケニーによる新コンテンツの誕生。

ここまで来て初めて「日本プロレスの海外輸出」ができるようになったのではないだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前編はここまで。後編では改めて棚橋の未来を見据えたプロレスについて思うところを書きます。